yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

ifの迷宮

【ifの迷宮】柄刀一 光文社文庫 ★★★★ 2005.7.18

 

 遺伝子テクノロジーが今よりもう少し進んだ近未来を舞台にしたミステリ。遺伝子チェックによる差別発生の問題など、かなり酷だけれどももしかしたら近い未来その通りに行く着きそうな社会や、違和感を持ち続け葛藤を重ねる一部の人々の心理など、実際にその世界を目にして来たかのような迫真(?)の描写。作者の先見的想像力に畏れ入る。

 身体的障害者に関する“熊ん蜂”の言と体外受精に関する“セーラ”の言(282頁)には曇った頭にがつんとくるものがあった。不妊治療に親であること或いはこれから親になろうという人の心理(それは時にエゴイスティックなものとなる)の抉り方が鋭い。