yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

舞姫・うたかたの記 他三篇

舞姫うたかたの記 他三篇】森鴎外 岩波文庫 ★★★★ 2005.8.7

 

 森鴎外読み三冊目でそろそろ擬古文体(解説では雅文体と称されていたが、両者の差異は“われ一個人にとりては”不明)の、当初のこましゃくれたイメージの鴎外作品を選んだ。

 ドイツ土産三部作は、道具立てに共通するものが多いものの、レトロモダンな優美さと、悲劇の質の緩やかな落ち着きとで、実に読ませる。各ヒロインが見せる情熱の表現幅も注目点で、「うたかたの記」での愛嬌ある奇矯などには特にまいった。

 さすがに四つに組まなければ読み進め得ないけれども、例えば馬車や馬を駆らせる場面で予想以上のスピード感を仮体験したりしていると、「森鴎外すげえ」とでも言いたくなる。確実に時の洗礼を受けて残った作品群かつ作家である。

 盗みたい表現の発見も度重なった。

 「そめちがへ」が実験的過ぎてハードルが高かったので、星四つ。

 

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 メモ。

 「舞姫」――小なる人物の小なる生涯の小なる旅路の一里塚なるべし by鴎外

 うれしとおもふ一弾指 (「うたかたの記」p.60より)

 輪はますぐなる道に委它(いい)たる蛇線を作りぬ。 (「ふた夜」p.122より)

(↑初の夜の小屋着前辺りの場面。委它の意味が分からん。)