【ファウスト 第一部】ヨハーン・ヴォルフガング・ゲーテ 池内紀訳
集英社文庫ヘリテージシリーズ ★★★★ 2005.8.30
かつてBSで白黒無声映画の「Faust」(F.W.Murnau監督,1926,独,かなりお薦め)を観たことがあったが、それが概ねこの第一部のストーリィだった。映画を観たときは第二部があることを知らなかった。
ストーリィは第二部に比べると単純であるが、要所要所の記述が今一つはっきりと描写されない感があり、注意していないと、例えば、ファウストがいつ若返ったのやら、マルガレーテの母親は何故死んだのか、嬰児殺しはあったのか、が分からない。
場面場面では、メフィストフェレスが人間や魔女に対して人並みに翻弄される、強いようで弱くその為にひねくれてしまったかのような言動が面白い。悪魔もいろいろ大変らしい。
ゲーテは風刺好きらしいことも分かった。そして、Proktophantasmist(臀部見霊者/尻の見霊者)の意味がやっと分かった。ここにも風刺の意があったとは。本書303頁を参照。