【ファウスト 第ニ部】ヨハーン・ヴォルフガング・ゲーテ 池内紀訳
集英社文庫ヘリテージシリーズ ★★★★ 2005.9.4
第一部の舞台であったドイツを離れ、今度は時空を超えたギリシアを舞台に、神話の人物や化け物など何でもござれの派手派手しい劇となる。メフィストフェレスさえドイツ悪魔の田舎者として、縮込まされてしまっている。奔放過ぎる展開は、もはや舞台化を本気で考えているとは思えない。ゲーテのギリシア神話への深い造詣と類稀(たぐいまれ)な想像力に圧倒される。
錬金術から読み解く解説も良かった。本位貨幣制に対する紙幣の登場も言わば錬金術の一種なわけだ。水銀と硫黄から金(きん)を作る妖しい時代はゲーテ以前に終わっていた。