yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

斜め屋敷の犯罪

【斜め屋敷の犯罪】島田荘司 講談社文庫 ★★★★ 2005.12.1

 

 斜めであることを多重に活かしたトリックもう一つの“流氷館”の方を先に知っていたが、思えばあちらも、一つの仕掛けを最大限に活かした作品だったように思う。敢えて同名の館にした意味も少しは分かるような気がする。といったことは本書に関係がないのでここまでとして、本書での最大のトリックは極めて秀逸であり、確かにインスピレーションを必要とするものだった。犯人はその者自身の不審な素振りでそれとなく知れたものの、手段の方は少しも閃かず。口惜しいような、騙されて嬉しいような。ただナイフの向きと挿入角度だけは、犯人の都合に肩入れし過ぎているように思う。

 しかし、島田氏の魅力については、紳士的で理知を感じさせる文体の方に(今のところの)私は重きをおきたい。加えて喜劇風な台詞回し。幕と場で構成された章立てがまた実に理に適っているというか、相応しい。