【車輪の下】ヘルマン・ヘッセ 実吉捷郎訳 岩波文庫 ★★★★★ 2005.12.18
何故今手に取ってしまったのか、全般に堪える作品だった。そして、全くこう書くと莫迦にされそうだが、あなたは私か、と告白したくなるようなギイベンラアトへの親情と、不気味に見透かされた感から、どうして分かる、と問い詰めたくなるようなヘッセへの畏れを、同時に掘り起こされる。硬くなって草叢(くさむら)と化した面(つら)を、名人に鍬打たれた畑の気分だ。
少年の時が持つ濃密。それを、一章一章に抜かることなく描き、さり気なくも不可逆な変化の一瞬も逃さない。