yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

幻詩狩り

【幻詩狩り】川又千秋 中公文庫 ★★★★★ 2005.12.15 第5回日本SF大賞受賞作 絶版

 

 期待を裏切らぬ面白さだった。改行が多過ぎる気もするが、それも物語の疾走感を手伝っていたかもしれない。

 言葉の知られざる機能、というテーマ。それは咒文に近いが、咒文は往々にして、それが唱えられる環境の演出が伴う。ここでは混じりっ気なしの言葉の(知られざる)機能を扱っている。もちろんそれを現行の言葉で、我々に書いて見せてくれなくては話にならないのだが、これがばっちり成功していると思う。“言葉”の一部をちらりとほの見せて、私も“アン・ユニヴエール・テネブルー”に連れ去られるかのような恐怖に、本書に両手でしがみついた。