yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

GOTH 夜の章

【GOTH 夜の章】乙一 角川文庫 ★★★★ 2006.1.4 第3回本格ミステリ大賞受賞作

 

 文庫で分冊されたのは驚いたが、薄い方がより若年層に購買され易い、つまり直撃しそうな読者層に読まれ易くなるのではなかろうか。戦略的には上手い。

 収録3篇の内では、「暗黒系」が最も“本格”的で良かった。細い細いナイフエッジを行く仮説の緊張感。踏み損ねれば、転落あるいは分断されるだろう、てな感じ。

 孤独でいたい、でも繋がっていたい。ふっと洩らした息にさえ溶けて消えてしまいそうな、微かで今にも切れそうな糸のように、繋がっていたい。みたいな憂い顔した小説がライトノベル(の特徴の一というかそういうのが多そう)かなと思っているけれど、今作もそんな風を感じた。なかなかに魅力的な世界かもしれないが、私自身はもう距離をおかざるを得ない年齢かなとも思う。実際に読んでいて、そういう世界に完全に浸かりきることが出来ないのもあるけれど。それで氏の作品は、わざと少し冷めた感じで読んでしまう面がある。他にわざと少し冷めた感じで読んでしまう作家に、村上春樹氏がいる。