【プリズム】貫井徳郎 創元推理文庫 ★★★★ 2006.1.5
勝負師だなあという感じ。ミステリの一要素を、先人の類例作品にも増して、より純粋に提出してみせてくれている。探査光の入射角も自由なら、得られる分光も好き放題の回折角で競って煌めき合う。「慟哭」に続いて、氏の同文庫作品はタイトルが厳然確固として極(き)まっているな。
読み終わった瞬間よりも、しばらく時間を措いてもう一度頭の中で眺め回した時に、じわじわその完成度の高さが知れてくる。気高い制作スピリットと、いざ生まれたこの美しい作品。
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以下の二作を上から順に読んでから本書を読むとより良い(体系的に読めるという意味で)。偶々(たまたま)どちらも読んでいたので、嬉しいというか助かったというか。徐々に古典読みの効果が出てきている模様。
1.エドガー・アラン・ポー「マリー・ロジェの謎」
2.アントニイ・バークリー「毒入りチョコレート事件」→これの感想はこちら