yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

十三妹

【十三妹(シイサンメイ)】武田泰淳 中公文庫 ★★★ 2006.2.18

 

 武田百合子氏の日記作品をいくつか読んできたが、では夫の作品はどうなのか、と思って手始めに読んでみた一冊。

 十三妹とは、どうやら十三人ほど人を殺した娘といった意味らしい。それなら十姉妹(じゅうしまつ)は……と思ったが、調べてみるとこちらはこちらなりの名の由来があった。

 中国のマイナな古典をミックスして、おいしいとこ取りのキャラクター小説といった風。先駆的ではあるのだろうが、今時の同人誌的なのりがあって、それは文庫化の際に、鶴田謙二氏の挿絵が加わったこともその証拠かと思われる。

 旅は旅そのものを楽しまないと下手に疲れるという旅の心と、人を殺した人の淋しさの二点の記述が印象深い。泰淳の戦中手記が最近、あるところへ寄贈されたが、その公開された一部の内容と相俟って、その淋しさを想像するだけでも視界が滲む。