【さまよえる未亡人たち】エリザベス・フェラーズ 中村有希訳 創元推理文庫 ★★★ 2008.7.1
英国ミステリ。舞台はマル島というところで、すぐ側の街オーバンなどの地名が出てくる。以前よりウイスキーを土地の情報と一緒に呑もうとしているけれど、オーバンにもその名前ずばりの呑みやすいウイスキーがある。そういうわけで、今後英国の小説を読むときは、しばしばそのような娯しみ方ができそうだ、と思わせた。
スコットランド(マル島はウイスキー蒸留所の地方分類的には所謂アイランズ)の、風の強い荒涼とした風土描写が、とても良い。一方内容は、最終的にはハートフルな感じ、としか思い出せない。小説って、読了直後はプロットの印象やその良し悪しが先行する(即効性がある)けれど、時間が経つと遅効性の高い雰囲気描写や色合い的なものしか残らないのかも。小説によるか。
まあしかしそう考えると、読了直後に付けている星の数は、プロット(ミステリに対しては加えてトリック)を主に評価していることに気付く。今、感想を書いていて、雰囲気の好印象がより思い出され、どうも星3つの評価は辛(から)いな、と思う。星の評価なんてその程度のものだったんだなあ。