yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

雪が降る

【雪が降る】藤原伊織 講談社文庫 ★★★★ 2005.7.29

 

 「よもつひらさか往還」に雪が多く出てきたことから、雪繋がりで読んでみた。

 出版年と生年から計算してみると、氏が50歳になるかならないか位の時期に書かれたもののようで、年の功か全篇を通して哀歓の浮沈が美しい。またサラリーマンだった経歴があるからか、仕事にまつわる記述において強い魅力を放っていたように思う。それに作品中を支配する小道具(例えば、「台風」なら台風にビリヤード、「雪が降る」なら雪、「紅の樹」なら塗装工と最後まで名の分からぬ樹)がさり気なくも掛け替えのない演出をする。一読、しんみり良い話。しかし上手いものは上手い。

 著作が少ないので、きっと全部読むことだろう。

 就職したら仕事をぱちっと出来る人間になりたいものだ。


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 余談。

 「トマト」はどうも読んだことがあるような気がして、確かこれだったはずだと、

 「二十四粒の宝石―超短編小説傑作集」赤川次郎・他 講談社文庫

 を眠気をおして調べてみたら、見つからなかった。ところが案に相違して都築直子氏の一篇「雪が降る」という今回読んだものと同じ題のものが収録されていた。ちゃっと読み返して寝た。

 翌日ネットで調べなおしたら、「トマト」こちらの方に、収録されていた。
 「輝きの一瞬―短くて心に残る30編」中島らも・他 講談社文庫