【グラン・モーヌ】アラン=フルニエ 天沢退二郎訳 岩波文庫 ★★★★ 2005.10.2
天沢退二郎マイブウムが唐突にやって来て、まだ見ぬ(読まぬ)「オレンジ党」シリーズへの想いを膨らましているところに、訳者として氏の名を見つけたので読んでみた一冊。
陳腐な表現になるのが口惜しいが、探索と恋愛の素晴らしい青春小説。友情、語り得ぬ冒険、夢の国からの使者、果たされぬ約束、孤独な懊悩、釈明の日記、そしてエピローグ……と、展開も童話的で速いが、私やモーヌ、イヴォンヌ、フランツ、ヴァランティーヌらのそれぞれの目眩めく青春と、切ないその余照の日々の少しが描かれる。
<探索という主題>を確かに感じる。あるのかないのか、当てもないもの、あれども雲ほどの当てしかないものを探して探して、追い求めて、結果どうなるのか、それすらも分からずに、でも探さずにはいられない。若さが涙を催す程に眩しい。