yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

童話集 風の又三郎 他十八篇

【童話集 風の又三郎 他十八篇】宮沢賢治作 谷川徹三編 岩波文庫 ★★★★ 2006.1.19

 

 擬音語や擬態語に自在さと共に、平仮名遣いが上手いところが羨ましい。いつ頃からか私はどうも漢語遣いに走りがちで、そのために妙烈とか酷大とか、造語のようなそうでないような言葉をこれまでの記事にも思いつくままに遣ってみてはきたけれど、平仮名遣いの道へはちっとも歩を進めることが出来ていない、と思う。困ったものだ。

 「カイロ団長」は畳み掛けてくるあっさりした残酷が恐い。「猫の事務所」はもう少しシリアスな残酷が描かれ、更に紙切れみたいにぺらぺらの救いが付される。「グスコーブドリの伝記」では、似非科学のようなものが出てき、加えてちゃかぽこした物語進行が、ポオの空想科学譚「ハンス・プファアルの無類の冒険」を思い出させる。「水仙月の四月」の冒頭のぼやぼやという擬態語だが、これまで読んだ天沢退二郎氏の著作にしばしば出ていた語だったので、これはやっぱり賢治研究の影響かな、と憶測で書いておく。

 

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 ↑岩波文庫における“篇”と“編”の使い分け方が分かる。