yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

武者小路実篤詩集

【武者小路実篤詩集】武者小路実篤 亀井勝一郎編 新潮文庫 ★★★★ 2008.8.2

 

 血縁者にいただいたもう一冊。編者の名前がものものしく感じられて、まこと勝手なことに政治家だろうと思っていたが、それは力一杯の勘違いであった。  谷川俊太郎氏もそうだったが、こちらはさらに平易な言葉を操る。ただし、詩と呼ぶよりは、散文と呼びたい。詩と散文の差は、例えば(そうだなあ)、虫食い誘電率、透磁率のおなら、みたいに言葉の上だけに在るものを行使するかどうか、だと私は考えている。だから詩集と付く書名に違和感を感じる。語呂が悪いが散文華集(?)か。

 文豪の手によるこのような生涯かけての、稚(いとけな)さと真摯(sincereness、英語でも音が似てる)で綴られた作品が、後の世の我々に遺されたこと、心底貴重に思う。誰がこのような散文を書いた/書けたとて(それにこの量だ)、世に出す勇気を持てよう。どこに共感したか、それすらも気恥ずかしく、書けない思いがする。書けない言葉、言えない言葉を、この本を携帯することで代わってもらうのも良い。  二篇だけ言及しておく。「どちらが本当か」が最も肩の力を抜いてくれた作品、「満八十になって」は遥か遠い老境の一姿に最も涙を催す作品だった。