【冬のオペラ】北村薫 中公文庫 ★★★★ 2006.2.27
連作短篇集が好きだ。表題作も含まれているけれど、三篇で「三幕の悲劇」的な構成だから本全体としてもオペラ。
自分が名探偵だとわかっている巫氏。「名探偵は存在であり、意思である」とあるが、名探偵という存在であることは、本人が一度気付いてしまったら自認するしかないだろう。それを、外部にアピールすること(少なくとも、あえて隠すようなことはしないこと)が、意思、だと思う。意思に潜む諸々の勇気がすごい。
これも、北村薫得意のワトソンのビルディングスストーリィ。ただし、名探偵と関わるがため(本当は名探偵は関係ないかも。多かれ少なかれ誰もが……)、裏解説にあるようにかなり残酷な体験の積み重ねとなっている。