yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

虹の獄、桜の獄

【虹の獄、桜の獄】竹本健治 建石修志・画 河出書房新社 ★★★ 2005.10.28

 

 「七色の犯罪のための絵本」に一篇の書き下ろし「しあわせな死の桜」を加えて単行本化した今作。前者は既に「閉じ箱」所収のものとして読んでいる。“赤”と“ラピスラズリ”が好み(cf.独自に選択された七色に因(ちな)んだ七篇がある)。初読の後者は、絵的にはきれいだが、どうも“銀”と重複した雰囲気で、新味が足りないような気がした。そうして全体でより扁平度を増してみれば、“白”の緊迫感が際立って良く思える。

 結局、一番堪能したのは建石修志氏の絵である。普段文庫しか買わない私からすれば、A5変判の紙面は広く、氏の冷ややかな絵を細部まで一つ一つ眺めさせてもらった。

 本書を絵本として捉えるには、文も絵も冷た過ぎやしないか。直線国境が見えるようだ。